Rainy-Rainy

と、他愛ない会話をしていると、隣を歩いていた桂くんが突然私の前に移動した。

前方の様子がぷっつりと消え、ほっそりとした桂くんの背中しか見えなくなる。

いくら華奢といっても、男の子だ。

それに背も高い。

そんな桂くんが前を歩くと、ただでさえ半分しかない視界が、余計に無くなる。


「桂くん」

「何だ?」

「前を歩かれると……」


邪魔と言おうとして、私はふと、背後に不快感を感じて振り向いた。

女子生徒が二人、私を見て、あからさまに何かを話している。

見れば、他にも数人。


……ああ。

やはりこの怪我じゃ目立つんだ。


「悪いな。邪魔か?」


解りにくいけど、少しだけ申し訳なさそうに尋ねられる。


「ううん」と私は首を振る。


桂くん、背中で庇ってくれてるんだ。

背が低くて(といっても桂くんに比べたらだけど)、痩せ過ぎている私なら、桂くんの後ろを歩けばすっかり隠れてしまう。

そうしたら、好奇の目を向ける子達には、私の姿は見えない。


「そんな事無い。ごめんね、桂くん」

「いいんだ」