Rainy-Rainy

少し間を置いて。


「コホン。桂の阿呆はもぉほっとくとしてや」


千鶴はわざとらしく咳ばらいをして、私の方に正面から向き直った。

そうして、真剣な目付きで、両肩にそっと手を掛けられる。


「ホンマに辛い時はちゃんと言うんやで。ええか?」

「うん。頼りにしてる、千鶴」

「クス、任しとき。ウチはお前のためやったら、なーんでもしたるんやから」


何でも、か。

やっぱり、千鶴はほんの少しの迷いもなくそう言うんだね。

きっと同じことを尋ねたら、桂くんも即答するんだろう。


そりゃ、そっか。

二年前の事、自分達のせいだと思ってるんだから。

……勘違いもいいとこだけど。



そう、二人の勘違いなんだよ。

二年前、お母さんが死んだのも、晶人さんが壊れてしまったのも。

私がこんなになってしまったのも。


二人のせいなんかじゃないんだ。

悪いのは、私。

確かに二人がしたことだって、きっと無関係じゃない。


でも、今のこの状況を選んだのは私自身。

自分の醜い願望を叶えるために、私が自ら進んで選んだんだ。

後悔なんてしてないし、間違った道だとも思わない。


だから、だからさ……二人が気を病む事なんて無いんだよ。