速水にとって、家庭は家庭。

女は女だった。

安定した家庭がある代わりに、無くしたトキメキを、自分だけの為に費やして、全身全霊をかけて愛してくれ、いつも自分にいつ見られてもいいように可愛くした恋人がいて愛を注いでくれる。

子供が寝ている隣で、妻とは味わえないような、スリリングで濃密な時間が欲しかったのだ、速水は。

妻でないから、ぴしゃりと言われる事もない、甘い甘い砂糖菓子だったのだ、優子の存在は。

妻に注がれる愛情と、恋人に注がれる愛情は全く違うものだから、比べる事はできない。