胸が熱くなった。

目の端に涙がにじんで痛かった。

ハッとしたように所長が離れた。


その時に、どうして、私の事少しは好きなんですかと聞けなかったのかと後悔している。

一生聞けなくなったからだ。




そして百合がやめてから、所長が栄転という左遷とやらになったらしく、その旅立つ日を先輩達が教えてくれた。

百合は驚いて所長に電話をかけた。

『お見送りに行ってもいいですか?』

「駄目だ。来ないでくれ!」

『どうして?どうして駄目なんですか?
私は会いたいです!
……所長に……。』

所長は苦しそうに言った。

「君にこの気持ちがわかるか!」

『分かりません。
でもそばにいてあげたいんです!』

「見せられないよ……。
君にだけは、こんな自分を見られたくないんだ!
僕の気持ちをわかってくれ!」

『わかりました……。』


それは所長が、皆の言うように、私を特別に愛しいと、他の人には持っていない感情を抱いていると言う事ですね……。

所長が辛いと思う事を私はしません……。

心でそう言い、電話を切った。