(私…たぶんクビにされるんだ。
今夜かな?
明日かな?)

思い詰めていると、砂利屋の社長が来た。

「約束通り来たよ。」

美夕はボックス席の隣に座った。

つい会話に詰まる。

マスターが睨む。

(もう駄目だ…。)

「私きっとクビになっちゃう。」

砂利屋の後継ぎの肩に少し頭を置いた。

酔ったふりして少し泣いた。

頭を撫でられながら泣いた。

案の定帰りに美夕だけ残るように言われた。

「何でしょうか?」

「明日から来なくていいから。

店に合わないみたい。

仕事ができると思って、時給もあげたのに!」

次の瞬間、美夕はマスターの前からいなかった。

フロアの赤い絨毯の上に、貧血を起こして倒れてしまったのだ。

でもマスターは黙って空を見つめ、美夕を見ようともしない。

目の前が真っ暗のまま、

(この人は冷たい。)

そう感じていた。

しばらくして起き上がった美夕は、頭を下げて店を出た。

これからどうしたらいいのか。