薄暗い店内、広いカウンター。

雛段みたいに10人のホステスがスタンばる。

客が一人来ると、全員が一人を構う。

客がいない時は誰もおしゃべりはしない。

クラブみたいだった。

砂利屋の後継ぎだけが、美夕に優しくしてくれた。

ホステスに慣れない美夕は、客が来ても緊張でガチガチになり、すぐに会話が途切れてしまう。

三日もすれば、マスターが冷ややかな視線を送る。

少しだけ口をきいた優美さんに、

「クビになるとかある?」

と、美夕は聞いた。

「普通にお仕事してたらないよ。」

優美はそう言った。

「私…失敗ばかりしてるからクビになるかも…。」

うつむく美夕を優美は励ました。

店の皆も客も優しかった。

マスターだけが冷たかった。