翌朝、わたしと先生は島のはずれにある柴田さんのお墓参りをした。
空はやっぱり青くて、とてもとても高かった。
「これでいいってことはないんだと思う。きっと、もっとみんながみんな幸せになる方法はあったと思う」
柴田さんのお墓に朝市場で買ったお花を置き、わたしは先生に語りかけた。
「それでもこうなってしまったことは仕方ないし、こうなった理由も考えればきりがない」
「うん」
「それでもわたしは、今、こうやって先生とすごく穏やかな気持ちでここに立てていることを、すごくありがたいと思う」
「柴田が導いてくれたのかもな」
「そうだね」
そのとき、突然風が吹き、その場の草木を揺らし、一瞬でかけぬけていった。
「柴田…?」
先生が空を見る。
なんの変哲もない青空。
わたしと先生は顔を見合せ、笑った。
車に乗り込む。
「どうする?どこか行く?いつまでここにいる?本島に戻ってもいいし、他の島にいるって手もあるよ」
エンジンをかけながら、先生がわたしに聞いてきた。
「うーん…、じゃあ、帰ろう」
「ん?」
「東京に、家に、帰ろう」
先生は一瞬すごく意外だというふうに目を見開き、それからまた、笑った。
「ん、りょーかい」
車が走りだす。