久々に出勤した店は、それなりに混んでいた。
最初は適当な客に順番についていたが、やがて夕方メールをよこした、わたしの指名客がやってきた。
「やぁ、瑞穂ちゃん。はは、少し痩せたんじゃないかい?」
既にどこかで飲んできたのだろうそのオヤジが近付けてくる顔は酒臭く、吐き気がしそうだった。
それでもわたしは笑う。
「ホントー?やったぁ。じゃあ今日はそのぶん飲んじゃおっかな」
「ははは、まぁとりあえず何か頼みなさい」
「わーい、いただきまーす」
わたしはいったい、何をしているんだろう。もはやこれ以上こんなことをしている意味はなんなんだろう。
それでもわたしには、ここにいる他に、何もすべきことがわからない。
「カンパーイ」
「いただきまーす」
「お、今日はいい飲みっぷりだなぁ。おい、君、瑞穂ちゃんにおかわりを」
普段わたしは、アルコールのフリしたジュースばかり飲んでいた。だけど今日は、必死で考えるのをやめたくて、ビールや本物にアルコールが入ったウーロンハイなんかをがんがん頼んだ。
「ほら、瑞穂ちゃん、きたぞ。ハイ、酎ハイ、なんてな」
「あはは、田口さんホントおもしろいんだからぁ」
店の女の子はアルコール入りを飲む子と飲まない子とに分かれていて、わたしは飲む子の気持ちがわからなかった。飲まない方が酔っぱらわなくて済むから、たくさん稼げるに決まってるのに。そんなふうに思っていた。
でも、今日、初めてわかったのだ。普段はうざったいだけの客のオヤジギャクも、アルコールが入れば笑って流すことができた。気持ちの悪い酒臭さも、そんなに気にならなくなってきていた。
ああ、キャバクラで働くって、こういうことか。
そのうちだいぶ頭が重たくなって、首をもられたわたしの耳元に口を近付け、その客は言った。
「なぁ瑞穂ちゃん、俺の女になりなよ」
最初は適当な客に順番についていたが、やがて夕方メールをよこした、わたしの指名客がやってきた。
「やぁ、瑞穂ちゃん。はは、少し痩せたんじゃないかい?」
既にどこかで飲んできたのだろうそのオヤジが近付けてくる顔は酒臭く、吐き気がしそうだった。
それでもわたしは笑う。
「ホントー?やったぁ。じゃあ今日はそのぶん飲んじゃおっかな」
「ははは、まぁとりあえず何か頼みなさい」
「わーい、いただきまーす」
わたしはいったい、何をしているんだろう。もはやこれ以上こんなことをしている意味はなんなんだろう。
それでもわたしには、ここにいる他に、何もすべきことがわからない。
「カンパーイ」
「いただきまーす」
「お、今日はいい飲みっぷりだなぁ。おい、君、瑞穂ちゃんにおかわりを」
普段わたしは、アルコールのフリしたジュースばかり飲んでいた。だけど今日は、必死で考えるのをやめたくて、ビールや本物にアルコールが入ったウーロンハイなんかをがんがん頼んだ。
「ほら、瑞穂ちゃん、きたぞ。ハイ、酎ハイ、なんてな」
「あはは、田口さんホントおもしろいんだからぁ」
店の女の子はアルコール入りを飲む子と飲まない子とに分かれていて、わたしは飲む子の気持ちがわからなかった。飲まない方が酔っぱらわなくて済むから、たくさん稼げるに決まってるのに。そんなふうに思っていた。
でも、今日、初めてわかったのだ。普段はうざったいだけの客のオヤジギャクも、アルコールが入れば笑って流すことができた。気持ちの悪い酒臭さも、そんなに気にならなくなってきていた。
ああ、キャバクラで働くって、こういうことか。
そのうちだいぶ頭が重たくなって、首をもられたわたしの耳元に口を近付け、その客は言った。
「なぁ瑞穂ちゃん、俺の女になりなよ」
