何時間経ってからかはわからない。
家を飛び出したわたしは、ケンくんの部屋の扉の前にいた。
鍵がかかっていて、電話もつながらなかったので、ぼーっとしながら部屋の前でケンくんを待っていると、そのうちにすっかり暗くなり、さらに待ち続けたところで、彼は帰ってきた。
「夏実、なにやってんの」
コンビニの袋を右手に下げていたケンくんは、わたしの姿を見ると、目を丸くした。
わたしはコンクリートから、すっかり冷たくなってしまったお尻をあげた。
「ケンくん、かけおちしよう。どっか、どっか遠くへ行こう」
本当は、もっと段階を踏んで、しっかり伝えるべきだったんだと思う。だけどこのときのわたしは、ケンくんの顔を見た途端にいろんな不安がこみあげてきて、ぱっとそれを口にしたのだ。