リナさんは店をやめた。
「もうこんな毎日たくさん!」
最後に彼女はそう言い放って、店を出ていったという。ドレスも靴もお給料も置きっぱなしで。
閉店した店内のソファに寝そべったり乾きものをつまんだりしながら、女の子たちはリナさんのことを話していた。
「リナちゃん、ずっと彼氏に夜やめろって言われてたって。それでも今はこれがあの子の稼ぎ口だからやんわり無理だっていってて。だからとうとう彼氏が店に来たのね。彼氏の方はリナちゃんは嫌々仕事やってると思ってたんじゃないかな。それなのにあの姿見て…」
リナさんと一番仲がよかったユキさんが、他の女の子たちにそんな話をしていた。
「でもあれはありえない。…最低の辞め方だよ。」
厳しい口調で言ったのは、ナオミさんだった。この店のナンバーツーで、リナさんと並ぶくらいの指名率を持っていた。
彼女はリナさんとはまったく違うタイプの女性だった。
かわいくて癒し系のリナさんに対し、美人で勝ち気なナオミさん。
そしてナオミさんは、きっとこの店の誰よりもプライドを持って仕事をしていたようだったから、リナさんのあれは許せないものがあるのだろう。
「たしかに。リナさんがあんなことやるとはおもわなかったなー 」
「あのヤクザ達超怖かったし。うちらの迷惑も考えろってかんじじゃない?」
他の女の子達も口々にリナさんの悪口を言い始めた。
「あーあ、ひどい言われようですね、リナさん」
そんな店内を見渡しながら、ボーイのヤマちゃんがビールをついでわたしに持ってきてくれた。
このヤマちゃんが、リナさん以外のひとりのわたしの話し相手だ。
彼は仕事ができて、リナさんと同様、誰にでも明るく話しかけるような性格。
「…まぁ、あれじゃしょうがないよ 」
わたしがビールを受け取って言葉を返すと、ヤマちゃんは目を丸くした。
「へぇ、以外だな。瑞穂ちゃんはリナさんの味方するかと思ってた」
ああ、たしかにわたしは、彼女のことが好きだった。憧れだった。けれど…
「わたしはあんなふうにはぜったいならない…」
ヤマちゃんは、そっか、ともらすようにつぶやいた。
「もうこんな毎日たくさん!」
最後に彼女はそう言い放って、店を出ていったという。ドレスも靴もお給料も置きっぱなしで。
閉店した店内のソファに寝そべったり乾きものをつまんだりしながら、女の子たちはリナさんのことを話していた。
「リナちゃん、ずっと彼氏に夜やめろって言われてたって。それでも今はこれがあの子の稼ぎ口だからやんわり無理だっていってて。だからとうとう彼氏が店に来たのね。彼氏の方はリナちゃんは嫌々仕事やってると思ってたんじゃないかな。それなのにあの姿見て…」
リナさんと一番仲がよかったユキさんが、他の女の子たちにそんな話をしていた。
「でもあれはありえない。…最低の辞め方だよ。」
厳しい口調で言ったのは、ナオミさんだった。この店のナンバーツーで、リナさんと並ぶくらいの指名率を持っていた。
彼女はリナさんとはまったく違うタイプの女性だった。
かわいくて癒し系のリナさんに対し、美人で勝ち気なナオミさん。
そしてナオミさんは、きっとこの店の誰よりもプライドを持って仕事をしていたようだったから、リナさんのあれは許せないものがあるのだろう。
「たしかに。リナさんがあんなことやるとはおもわなかったなー 」
「あのヤクザ達超怖かったし。うちらの迷惑も考えろってかんじじゃない?」
他の女の子達も口々にリナさんの悪口を言い始めた。
「あーあ、ひどい言われようですね、リナさん」
そんな店内を見渡しながら、ボーイのヤマちゃんがビールをついでわたしに持ってきてくれた。
このヤマちゃんが、リナさん以外のひとりのわたしの話し相手だ。
彼は仕事ができて、リナさんと同様、誰にでも明るく話しかけるような性格。
「…まぁ、あれじゃしょうがないよ 」
わたしがビールを受け取って言葉を返すと、ヤマちゃんは目を丸くした。
「へぇ、以外だな。瑞穂ちゃんはリナさんの味方するかと思ってた」
ああ、たしかにわたしは、彼女のことが好きだった。憧れだった。けれど…
「わたしはあんなふうにはぜったいならない…」
ヤマちゃんは、そっか、ともらすようにつぶやいた。
