半年前、ケンくんと付き合いはじめて三ヶ月くらいたったころだったと思う。
そのとき高校2年生だったわたしは、キャバクラへの勤務を始めた。
それまでずっとあの重苦しい家を出るために、家族には部活だと偽ってコンビニでちまちまバイトをしてお金を貯めていたのだけれど、ケンくんと付き合うようになってから、二人で幸せになるためのお金が必要になった。
求人情報紙めくって、時給2400円の文字を見つけて、隅っこの方にあるちっちゃな記事に電話した。そこがあのキャバクラだ。
まだ17歳のわたしを、そこは簡単に採用してくれた。
ある程度顔が可愛ければ、若い子の方が店側だっていいのだ。
さすがに高校生はいなかったけれど、15歳から水商売やってる、なんていう同い年の子もいた。

最初は辛かったけど、だんだん嘘の笑顔と客が喜ぶ上べの会話が巧くなって、気づいたら16人いる店の女の子のうち、バックルームに貼ってある指名率のグラフが、5位の成績をしめしていた。

明け方店から帰ってきてシャワーを浴びようとしたら、鏡に映った自分の顔は、半年前より何倍も化粧が濃い顔になっていた。