店の扉が開き、客引きのオニイチャンの後ろについて、客が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
目の前でわたし達は立ち上がり、感じのよさそうな微笑みを顔に張り付けて会釈する程度に頭を下げる。
客はサラリーマンといった風貌の4人組。
1番若いと思われるのは20代半くらいか。それから30代前半くらいのが2人と、上司らしさが全身から表れている40代くらいの男。
「わぁ、そんなに期待してなかったんだけど、けっこうかわいいなぁ」
ボーイに席を案内されながら、30代らしき男の片方が呟いた。
男たちが通され、おしぼりで手を拭いているところに、わたしたちは歩いていく。
「ではご紹介します」
ボーイか言う。
「香織さんです」
「はじめましてー」
「ゆりなさんです」
「おじゃましまーす」
「ユキさんです」
「よろしくおねがいします」紹介された順に、女の子たちは男のとなりについていく。
「瑞穂さんです」
最後にわたしの名前が呼ばれる。わたしの中にあるスイッチが、切り替わる瞬間。
「おとなり失礼しまーす」
私生活じゃありえないくらいの愛想をふりまいて微笑み、わたしはあいている席についた。