それから3日くらいあけて、わたしが中庭でお昼をたべているところに、再び先生はやってきた。
「なんか南野さんって話しやすいよね」
コーヒー牛乳のパックを片手に、先生は笑った。
「初めて言われました、そんなこと」
わたしはお弁当を食べ続けながら、彼の顔を見るわけでもなく応じた。
わたしのことを昔好きだった女に似ていると言っていたくらいだから、きっとこの人の女性の趣味は悪いのだろう。
さらに先生は話かけ続ける。
「南野さんは花とか好き?」
「はぁ」
適当に相槌を打った。実際のところわたしは、かなり花は好きだったりする。
「そっかぁ。まぁ荒れ果ててたっていうここをこんなにきれいにしちゃうくらいだもんね」
始めにくらべて、ずいぶん饒舌になったものだな、と思う。
今じゃすっかり、クラスの生徒たちからも人気があるし。
「実は俺今好きな人に何かプレゼントしたいって思ってるんだけど、やっぱ花がいいかな」
突然飛んだ話になり、わたしは思わず飲んでいた爽健美茶を吹き出しそうになった。
「はぁ、まぁ、いいんじゃないですか。花束もらって悪い気する女はいないだろうし」
あんたの彼女のことなんてどうでもいいよ、と思ったの半分、そんな相手いたのか、と思ったの半分。
とりあえず平静のままのふうで答えた。
「そっかぁ、ありがとう」
ふと顔をあげて目に入った先生の横顔は、なかなか真剣な面持ちだった。

その週末、キャバクラにいる瑞穂のもとへ、先生は花束を持ってやってきた。