校舎の隅っこに追いやられたかのように、うちの学校の用務員室の扉はある。
そしてそのさらに奥にはもうひとつ、ぽつんと灰色の扉があり、それは、開けると小さな中庭につながっている。
そこは4畳ほどの狭いスペースで、雑草だらけで、いつ植えられたんだかわかんないような枯れかけの植物が生えたプランターや上木鉢が乱雑に放置されていたり、ひび割れた水槽なんかが転がっていたりする、汚い場所だった。
学校でひとりになれる場所を探していたわたしは、一年半ほど前にここを見つけた。
学校の人間から忘れ去られたような場所。
それからわたしは今までもてあましていた昼休みという時間になるとここを訪れ、ひさしの下で昼食をとっていた。
やがて時間を潰すために、このスペースを片付けるようになった。
プランターや上木鉢から枯れた植物や雑草を取り除き、生き残った花に水をまいたり、水槽なんかのガラクタを一ヶ所にまとめたり。
それだけなんだけど、毎日やっているうちにそこは、なかなか居心地のいい場所になった。

今日もわたしは昼休みになると、小さな中庭に行った。
教室はうるさいから、お弁当を食べるのはひとりがいい。
ゆかりのふりかけがかかったご飯を口に運びながら、わたしをとりまく世界について考える。
いつからだろう、当たり前のように平和に毎日を過ごしている同い年の周りの子達に、なじめなくなったのは。
彼らの話していることが幼稚でうすっぺらに見えるようになって、最初は頑張って話をあわせたり笑顔を返したりしていたけれど、いつしかそれすら面倒くさくなって、高校に入ってからは、必要なこと以外はすっかり周りとしゃべらなくなった。
でも、いいんだ。そっちの方が楽だから。
お弁当を食べ終わり、ケータイを開いてケンくんにメールを打った。
わたしには、彼だけいればいいんだ。