「そっかぁ、それはよかった」
「ただ…」
「?」
「ただ、イマイチ受け入れてもらえないというか、あまりよくは思われていないというか」
「…それを、相談しに来たの?」
「はい」
なんなんだろう、この人は。キャバ嬢にそんなこと相談して、まっとうな答えが返ってくると、本気で思って来たのだろうか。
それでもわたしは、がんばって答えを考えた。
生徒に受け入れられる、先生の条件。
きっとこの人は、ナメられてはいるけど、まだ嫌われてはいない。
若いんだし顔だって悪くないから、うまくやれば女子生徒ウケもかなりよくなるかもしれない。
「とりあえず、髪をちょっと茶色くしなよ」
「え」
「ほんの少しくらいなら問題ないでしょ。あとネクタイ、スヌーピーとかディズニーとか、キティでもいいや。今そういうキャラクターものでお洒落なの出てるからさ、そーゆーのつけてると、けっこう明るいイメージがわくから」
「…はぁ」
人なんて見た目だ。見た目ですべてが決まるのだ。
わたしがキャバ嬢と真面目な女子高生を演じわけていられるように。
「信じてないでしょ。いいから試しにやってごらん。で、なんなら教頭とかに睨まれない程度に髪もちょっとワックスでいじってさ」
すると先生は、くすりと笑った。
「わかりました。睨まれない程度にやってみます」
「うん。あ、あと、それで生徒によくなった、とか褒められたら、すかさず言ってきた生徒のことを褒め返すの。髪型でもなんでもいいから」
これはキャバクラでの会話でも同じ。客に何か褒められたら嘘でもいいから褒め返す。
人間なんてそんなちっぽけな虚空で気分を良くするんだ。
「…わかりました。ありがとうございます」