春休み中は毎日のように通っていたキャバクラも、今週からは金曜土曜だけの出勤になる。
さすがにそれくらいじゃないと学校と両立する自信はないから。

始業式のその日、学校は昼前に終わった。
その足でコンビニに寄り、ふたりぶんのお弁当とお酒とお菓子を買う。
それらが入ったコンビニ袋ぶら下げて向かった先は、わたしの彼氏、ケンくんがひとり暮らしをしているアパート。

「ケンくーん、おはよー」
咲花ハイツという名のそのアパートは、咲花という文字のイメージからはかけ離れたような、安っぽい建物。
そこの2階の1番奥の扉を、わたしはコンコン叩いた。
ガチャリと鍵が開く音がして扉が開き、すぐにジャージ姿のケンくんが顔をだした。
「じゃんっ、ハンバーグ弁当!」
「おー」
ケンくんに迎え入れられ、わたしは通いなれた部屋に入る。
「あいかわらず散らかってるねぇ」
畳ばりの六畳しかないその部屋には、脱ぎっぱなしの衣服や空になったペットボトルなどが転がっている。
「夏実が来るたび片付けてくれるからつい」
「もー」
呆れたふりをしつつも、悪い気はしなかった。
わたしは話しながら、隅においやられていたちっちゃいちゃぶ台を部屋の真ん中に寄せ、その上にコンビニ袋の中身を広げた。
「ケンくん今日はバイト休み?」
「んー、夜から」
「そっか、じゃあまだお酒飲んでも平気だよね。買ってきた」
「お前酒好きなー」
「へへー」
ふたりで缶ビールを開けて乾杯し、お弁当を食べ始める。