朝がやってきた。
午前7時。

夜中に勤め先から帰ってくるわたしは、自室の窓から家に入り、シャワーを浴びて化粧と髪にかかった巻きを落として眠り、朝を迎える。
それなりに広い一軒家だし、寝静まっている時間帯だから、家族はわたしの行動には気付かない。
ちなみに出勤するときも同様、バレないように部屋から抜けだしている。
こんな生活を続け、半年近くになる。
起きたらわたしはなにくわぬ顔で朝の食卓につくのだ。

「おはよう」
リビングへ行くわたしが着ている服は、高校の制服。
「おはよう、目玉焼きとスクランブルエッグ、どっちがいい?」
「スクランブルエッグ」
母は台所に立っていて、食卓には父と弟がすでに座っていた。Yシャツにネクタイ姿の父は新聞を読んでいて、中学の制服を来た弟は天気予報図が映し出されたテレビを見つめていた。
ふたりにもおはよう、といってわたしも食卓につくと、すぐに母がスクランブルエッグとレタスの千切りとハムが乗った皿を目の前に出してくれた。
ご飯と味噌汁の入った茶碗は、すでに置いてあった。
それからすぐに母も空いていたわたしのとなりの席についた。
「いただきます」
全員が手をあわせて、南野家の朝食の開始。