学校裏の花壇で一人花の世話をしている女の子。

愛しげに花を見る瞳や、それに触れる優しい手つき。

夕焼けに照らされてキラキラして見えた。


思わず声を掛けたんだ。


「花好きなの?」


って。

そうしたら、驚いたように目を見開き「ごめんなさい」と逃げられた。

こっちも驚いた。

でも、絵になるような声をかける寸前までのあの光景が、忘れられなかった。

あれは、俺の―――





***





「―――あ?」



じゃんけんに負けた俺は、ただいまゴミ捨て真っ最中。

小さく独り言のように愚痴をこぼしながら、校舎裏のゴミ捨て場にいる。

んで、青いでっかいバケツあるじゃん?ゴミ捨て用の。

今それを開けたわけ。


そうしたら・・・



「上履き?」



出てきたのは上履き。

見た目は普通に綺麗な奴。

いや、汚れてはいるけどさ、俺ら男から見れば「全然イケんじゃん。」みたいな。

穴も開いてねぇし、壊れた雰囲気もねぇし。


勉強は出来ねぇけど、勘はいい。

それがみんなにも言われる俺の取り柄。



「あぁ、いじめか。」



いじめ、なんてごくごく普通。

確か先輩の学年に二人、うちの学年に一人、後輩に一人ターゲットがいたな。

え?なんで詳しいかって?

それ、俺の人望。・・・なーんて。

とりあえず、人脈が広いから色んな奴が情報教えてくれるんだよ。



にしても、どうすっかなー。

俺は頭を掻いた。


お人好しなのも、俺の特徴。

いじめの靴見つけてそれこのまましておくこともできねぇし。

あー、かと言って、全学年の靴箱調べんの?マジで?

さすがに俺、虐められてる人の名前まで知らねぇもんなー・・・。

なんでこの上履き名前まで消されてんだよ!!


困ったため息を吐きながら、俺は教室に戻り、部活へと向かった。