「あの――」
 「あのさ――」


 二人の声が重なった。


 「先……どうぞ(笑)」

 「あ、ごめんね この後時間ある?」

 「えっ!?」

 「軽く夕飯でも……って思ったんだけど、それはまた今度にしよう。家の人心配するよね? 家何処? 送るよ」

 今言わなきゃ……

 もう、この手を離したく……ない。


 「先輩!!」

 「な、何?」

 
 左手に力を込めたまま発音してしまったから、先輩がビックリしている。

 ごめんなさい

 今は、そんな事より――