「ちょっと待ってて」 そう言った先輩は、人混みに雑ざって行った。 一人、木陰にいると―― 『……次が最後のチャンスだよ』 ふと、一美の言葉が頭に過る。 うん……そうだよね? 今日がその日だよね だけど まだ覚悟は決まらない。 お日様が優しく雲の間から顔を覗かせた。 ほんのちょっぴり春の香りのする冷たい風がサラサラっと身体にあたる。 腕と顔の火照りを冷やしてくれるようで心地いい。 ・