― 2時間前


 急に態度がよそよそしくなった沙良を問い出したら、意外な答えが返ってきた。


 「いい? アンタは今日は敵やからな」

 「どうして? 一緒に応援しようよ」

 「私は、我が校を精一杯応援する。アンタは夏木先輩だけを応援しぃ」

 「そんなの無理だよ。どっちにも頑張ってもらいたいもの」

 「そんな中途半端な事してみぃ? どっちも傷つくで!!」

 「……」

 どっちも? 惺さんもケンくんも傷付くって事?


 「それが出来ないんやったら、試合を見ずに帰るんや!!」


 究極の選択ってヤツだ。


 私にとって、彼も親友も大事な二人。


 手の中にあるデジカメに視線を落とす。

 そうだよね、私はファインダーにこれから収めていくって……決めたものね。


 「私、精一杯惺さんを応援する♪」

 「それでこそ柚朱や☆」

 私たちは、これからほんの一瞬だけライバルになる誓いをたてた。