そっか……。


奏ちゃんは準の事を知らないんだ。


『………ううん。


関係ない。』


『そっか。また頭が痛くなったら言えよ。』


『うん。』


黒いメガネの先にある瞳。


何の濁りもなしにあたしを見る瞳。


あたしが触れたら汚してしまいそうで。


あたしはあなたを頼れなかった。


そして終わりのチャイムが鳴り響き、


みんな一斉にあたしの所へ質問攻め。


『あたしの事、覚えてる?』とか、

『辛かったんだ。


あたしが力になってあげるよ。』とか、


かなり在り来たりの言葉なはずなのに、


みんなの瞳を見たら


そんな事言えなかった。


あたしには分かる。


人がどんな瞳をしてるだけで、


何を思ってるのか。


それは弧児院にいた頃に執着して、


それであたしは他人に迷惑をかけないよう生きてきた。


でも今みんながあたしに向けてる瞳は、


“力になりたい”

本当の心だった。


だからあたしは気兼ねく話した。


この時が一番笑顔だったかもしれない。


たくさんの笑顔に囲まれ、


愛に満ち溢れてた。


そんな時、









『ちょっといいかしら?』


誰かが尋ねてきた。