いくつかわかったことがある。


 殿は、お湯、または、水をかけると本来の男の姿になること。


 そして、日の入りとともにマキの体に戻ってしまう、


 ということだ。


 って、こんなに落ち着いちゃいられない。


 僕の隣の布団には、濃紺の浴衣を着た、


 マキが眠っていた…!!


 僕は、小声で殿を起こす。


「殿!!


起きてよ!!


マキになってる!!」


 殿はパチリ、と目を覚まして、


「まことじゃ!!」


 と、ふとんをかきのけた。


 はだけた浴衣の隙間から、マキのノーブラの…


 くそ!煩悩退散!!


「殿!真木くんじゃなくなっちゃう!!


そこの服着て、


始発で家族に会わないように行っちゃおう!!」


 外はまだ、そこまで明るくない。


 うちの家族はみんな朝寝坊だ。


「しかし、タケルの母上に宿の礼を…」


 しぶる殿に無理やり服を着せて、


 僕は浴衣を二枚バッグに詰め込んで、


 実家を後にした。