いつもなら、暇で過ごす時間があっという間に過ぎていった。

23歳。

名前は、久遠 利人。

彼は、とても温和な雰囲気だった。

きっと、暖かい両親の元で育てられたのだろう。

笑顔の表情もなんだか、かわいらしい。

「そういえば、なんでこんなに電車って来ないんですか?」

唐突な言葉に少し戸惑った。
電車を待つ姿は、とても慣れているように見えたので、少し驚いた。

「えっ。」 思わず声が大きくなった。

「初めて来たんですけど・・・。こんなに、電車来ないの初めてで・・・。というか、電車に乗ること余りなくて・・・。」

今時の若い人には珍しく、電車より車で行動することが多いのだろう。

「ここって、1時間以上電車来ないのって普通なんですよ。」 
と、私が言うと納得したように、深くうなずいた。

遠くで踏み切りの音が聞こえた。

電車がやっと来るらしい。

「やっと来ましたね。」

「そうみたいですね。」

二人で、顔を見合わせ、微笑んだ。


彼の、奥さんがうらやましい。

素直にそう思った。