弱気になっているのが分かる。
黒刺の言葉には人を惑わす魔力があった。
「……ユゼと貴方は…違うわ」
返される笑みは、楽しげにも憐れんでいるようにも見える。
「人よりも、私の方が近しい存在だというのに?」
「だって、ユゼは人を守ってくれているんだから」
この男のように、人を家畜だなんて思っていない。
「人など、我らにとっては家畜も同然」
切り捨てるように黒刺が言った。
「どんな綺麗ごとを並べようとも、飢えれば食うだけだ」
「そんなこと…しないわっ」
「本当に、そんなことが言えるとでも」
「思ってるわ」
おかしくて仕方がないというように黒刺が唇を震わせている。
「我らのことを、何も分かっておらぬようだな。何故、こんな小娘を贄にしたのやら」
「それは……」
痛いところを突かれるて、私は押し黙った。
この男に真実を話してはいけない。
人の弱い部分を無遠慮に掴むこの男には。
「見たところ、特別取り柄があるというわけでもない」
心底不思議そうに呟く。
そして、何かを確かめるように、黒刺は冷たい手で私の手首を掴んだ。
「離して」
聞こえているはずなのに、当然のように無視される。
掴まれた手首が痛みで悲鳴をあげていた。
「本当に、どこが気に入ったのやら」
私はベットの上で後ずさる。だが、手首を引き寄せられ、それも構わない。
掴まれた手とは逆の肩を押され、私はベットに倒れ込んだ。
黒刺を見上げるような格好になる。
人を蔑む目が私を捉えていた。
「とはいえ、あれの考えることなど大して興味はないが」
押さえつけられ、身動きが取れない。
怖い。
恐怖で体が凍り付いていった。
黒刺が、ひどく楽しげに笑う。
「私は、他者のものを奪うのが何よりも楽しい。
もう幾分か、あれの寵愛を受けていれば、奪いがいがあっただろうに。残念だが、仕方あるまい」
「い…いや……っ」
何をすると言うのだ。
黒刺の指が私の首筋を爪でなぞる。
その指は鎖骨を越え、左胸へと向けられた。



