吸血鬼の花嫁



まるっと逆だ。

ユゼは、この国を守っているのであって、他とは無関係である。

吸血鬼事件なんて起こしてなんていない。

むしろ起こらないように防いでいる側だろう。


「赤喰みは、自分たちで起こした事件を、青珀のせいにしようとしているんだ。もちろん自分たちが吸血鬼だってのは隠してね。

青珀、もし人が襲ってきたらどうする?」


世間話のように軽い口調だったが、声音は真剣だ。


「…人の子が私を傷つけられるとも思えないが」


青珀は私の方へ首を動かす。


「どうして欲しい」


問われているのは、ハーゼオンではなく私だった。

三人の視線が私に集まってくる。

この中で、人側なのは私しかいないからかもしれなかった。


「…出来たら、穏便に解決して欲しいわ」


どんな理由であれ、誰かの血が流れるのは見たくなかった。

綺麗ごとであったとしても。

そして何より。


「手を出して、これ以上貴方が誤解されることになったら、凄く嫌だから」


身を削ってこの国を守っているユゼが、なぜ、濡れ衣を着せられなければならないのだろう。

私は腹立たしかった。


ユゼが少し驚いたように片眉をあげて私を眺める。

何か言いたげな仕種をしたが、結局口にしなかった。


「……相手が人の子ならば、こちらから手を出すことは極力避けよう」

「分かった。ただ、吸血鬼相手だったら手加減しない方がいいと思う。あいつらは覚悟のうえで手を出してくるわけだからね」

「だろうな」

「何にしろ、戦力不足なんだ。この国で何かあっても、俺はすぐに駆け付けられないかもしれない」

「戦力不足っつったら、こっちも大概だけどな。数で攻められたら分が悪りぃ」


ユゼには、ルーしかいない。

私が戦力になるはずもなく、いくらユゼが強かろうが、これでは苦しそうだ。


「うん、だからなるべく今後の動向に気を配って欲しいんだ。早めに対策を取れるように」

「あぁ」

「全てが俺の早とちりで、杞憂に終わればいいんだけど」


ハーゼオンは笑う。その笑みはけして人の心に暖かさを運ぶような柔らかなものではなかった。