「何やってたんだよ」
出迎えたルーが口を尖らせる。
「ごめんなさい、迷ってて…」
家妖精は食堂に着くとどこかへ行ってしまったようだ。
私が頭を下げると、ルーはしまった、という顔をする。
「あ。いや、悪かった。ちゃんと俺が案内すれば良かったな」
「でも、途中で吸血鬼に会って…、そうだ。あなたに渡してくれって」
吸血鬼に頼まれた本をルーに渡す。受け取った本の中で一番綺麗なものをルーがぺらぺらとめくり、急に笑い出した。
「こんなに古い本じゃ、参考にならねーっての。まったくあいつは…」
ふと、ルーは何かに気付いたのか、笑いを止め思案顔になる。
そして、初めから丁寧に本を読み始めた。
「三百年…よりもう少し古いぐらいか」
「何の本なの?」
邪魔しては悪いと思いつつも口を挟む。ルーはあっさりと本を閉じて私を見上げた。
「ん、ああ。花嫁にも普段着用のドレスがいるだろ。俺、女の衣装なんて分からないから、何か参考になる本ないかって探しておいてもらったんだ」
「私のドレス?」
「こういうのが欲しいってのがあったら、遠慮なく言ってくれよ」
とは言われても。年頃の女の子としては、憧れるものはあるけれど、具体的なデザインは思い浮かばなかった。
そもそもドレスを見る機会だってそうそうないのだから。
「普段着なら、私、いらない布さえ貰えれば自分で作るけど…」
ドレス、とは呼べない質素な服しか作れないが。
だが、ルーはなぜかまた考えこんだ。そして、茶の瞳に期待を浮かべて私を映す。
「じゃあ、この本載ってる衣装作ったりできないか?」