ユゼでは誰でも知っている昔話だ。 だけど、本当は誰も吸血鬼なんて信じていない。 もちろん、私も信じていなかった。 …半年前までは。 北の端にある私の村に、『吸血鬼が出る』なんていうふざけた噂が入ってきた時、 私と双子の妹のレイシャは冗談だと思って笑って聞いていた。 吸血鬼なんて、お伽話の世界の住人でしょ、と顔を見合わせた。 だけど、噂は収まることなく膨らんでいった。 吸血鬼が人を襲っている、と。