固まる私をよそに、ルーは目を伏せ、自分の分の紅茶を一口飲んだ。


「どうしようか迷ったけど、俺は吸血鬼側の者だし、全部綺麗事ってわけにはいかないから、話しておく」


ルーの表情から明るさが消え、声の調子が低くなる。
14、5の少年とは思えない、落ち着きを持っていた。


「吸血鬼の血ってのは、麻薬みたいなもので、飲めば飲むほど人ではなくなっていくのに、一度飲めば、飲まずにはいられなくなる」


それは、私自身怖いほどに知っている。


「じゃあ、なんで吸血鬼が人に血を飲ますかというと、血を飲んだ花嫁からは効率的に生気を摂取できるんだ。

例えばが悪いが、人も食べ物に調味料を入れて味を整えるだろ。それと一緒で、吸血鬼は己の血で人を自分に近しい存在にすることが出来る」

「…だから、生贄なのね」


花嫁がいれば、吸血鬼は他の人を襲わずにすむ。
私がそう言うと、ルーは小さく頷いた。


「ま、人を襲って血を吸うような奴は、大概野良か小物だけどな。
強い奴ほど、血が混じるのを嫌うから」


レイシャを襲った男も弱い吸血鬼だったのだろうか。
だけどあの時、青い髪の吸血鬼は、それなりに力はあるようだが、と言っていた気もする。

……。

吸血鬼の世界も色々複雑だ。