男の叫びに、私は気が遠くなりそうになった。
だけど、そうも言ってられない。
私は吸血鬼の腕をふりほどいて、レイシャの元に駆け寄った。
「レイシャ!しっかりして!」
息はある。
体もまだ温かかった。
「その娘とこの娘はまだ血を吸われていないようだな。だが、奥の二人は遅かったようだ」
吸血鬼が私の後ろで淡々と言った。
奥の二人は顔が土気色をしている。
知らない顔だ。
別の村からさらわれてきたのだろう。
心が、ずんと痛んだ。
「……ごめんなさい、助けてあげられなくて」
「なぜ、お前があの娘たちに謝る」
理解できない、と言いたげな吸血鬼に問われる。
「私の力が足りなかったからよ」
「でも、あんた以外の誰も助けに来てねぇみたいだし、あんたの一人じゃ何も出来ないと思うけど?」
後ろから少年が口を挟む。
…それはそうかもしれない。だけど。
「助けられる可能性があったのなら、助けてあげたかったわ」
抱きしめたレイシャの体が冷たかったら、私はきっとこの世界を恨んでしまう。
そういう思いをする人が出てしまったことが、とても辛かった。