「お前はどこの者だ」
「聞いて…どうする」
二人の声が洞窟に響く。
「私の領域を荒らすような不届き者の主人が誰なのか、知りたいだけだ」
馬鹿にしたような吸血鬼の言葉に男が怒りで震えた。
「なんだ、と…」
「見たところ出来損ないなりに力はあるようだが。大方、主人に捨てられでもしたのだろう」
図星だったのか、男の顔が変わる。鋭い牙を剥いた。
「お前に…あの方の何がわかる!」
男は吸血鬼へ飛び掛かる。
鋭い爪が高い音を立ててマントを裂いた。
「ルー!」
吸血鬼が私の後ろへ向かって叫ぶと、外から飛び込んできた少年が十字架を投げつける。
ジュッ……
十字架は男の顔に当たり、その皮膚を焼いた。
「あぁぁぁあぁ!!!」
男は叫びながら顔を押さえて転げ回る。
「心臓は外しておけ」
吸血鬼の命令に少年は頷き、男へと近づいた。
少年の顔から感情が消える。
右手に銀のナイフを持った少年は、躊躇いなく男の胸に光る刃を突き立てた。