吸血鬼の花嫁






気まずいまま、何日か経った。

私はユゼのいる場所を避けて過ごしている。

いくらユゼを避けているといっても、いつまでも自室に篭っているわけにはいかなかった。

ふらふらと居場所を求めて館内をさ迷う。


と、突然後ろからスカートの裾を引っ張られた。

疑問に思い振り返ると、そこには見知らぬ少女が立っている。


「!?」


長く波打つ銀の髪。前髪だけは、眉の上で切り揃えられている。

前髪の下の大きな紫紺の瞳は、見たことのない色合いだ。

少女の白い頬は柔らかく、唇は上品に紅い。

黒を基調としたドレスで、一点の隙なく飾りたてられていた。

非の打ち所のない美少女がいる。


私はその少女をまじまじと見つめた。

年頃はルーよりも更に幼い。

十を下回っているのではないだろうか。

それはともかくとして、この館の客人はどうして普通に玄関から招かれて入って来ないのだろう…。


「そこの女、案内を致せ」


人形のような完璧な美を持つ少女が口を開く。


「わ、私?」

「そなた以外に誰がいるというのじゃ。目が悪いのか。それとも頭が悪いのか」


戸惑う私に、少女はきつい言葉を返した。

私は言葉にうっとつまる。


「まず、名前を聞いてもいいかしら」

「ほお。わらわに名を問うとは。なんという身の程知らず」


人を小馬鹿にした態度で少女が答えた。

私はだんだんと少女の態度に腹が立ってくる。


「名前も名乗れない人を案内するつもりはないわ」


言い返すと、少女が私を見上げた。


「……良かろう。我が名はミルフィリア。紫焔とも呼ばれている」

「……しえ、ん。紫焔がどうしてここに」


知っている尊称だ。

青珀、赤赦と同盟を組むもう一人の吸血鬼。


この偉そうな少女が、紫焔…。

こんなにも幼いなんて。


そう言われれば、この態度にも納得が出来た。


「青の花嫁は頭が悪いようじゃな。呼ばれたからに決まっておる。分かったら、さっさと案内致せ」

「わ、分かったわ…」


私は促されるまま、ずっと避けているユゼの元へと重い足取りで向かった。