其の名はT・Y

私は何も言えなくなって目をそらす。するとまた、目の前で通信のランプが点いているのに気づいた。

<<こ、こちらシードッグです、どうぞ>>

<<あーあー、こちらは合衆国大統領、ジョーイ=バッシュだ。シードッグの諸君ご苦労だった。任務は終了だ、帰還したまえ>>

私の耳はどうかしてしまったのだろうか。

こんな一介の中規模潜水艦にプレジデントが直接通信?さっきからのこと全てが悪い冗談か悪い夢か悪いドラッグでもキメて見た幻覚としか思えない。

<<なお、今回の作戦については今後極秘とし、一切の情報漏洩を禁ず。もちろん>>

大統領を名乗る男は強調するように一拍置いてから言った。

<<私の親友、T・Yについてもだ>>

実際の空は数百メートル上の海面のさらにさらに上ではあるが、思わず私は天を仰いだ。