交差点を曲がったところで信号が赤になり、横断歩道の手前で車が止まる。 「篠田」 あたしを呼ぶ声に惹かれて、運転席に視線を戻した。 目と目が合う。 ふいに訪れた唇の生温かい感触。 煙草の苦い味がした。 ゆらゆら。 ゆらゆら。 目に焼きつけた藤木先生の育てた色どりの花がモノクロへと色を失っていく。 横断歩道を歩く人々の中によく知る顔が見えた。 だけどあたしはまるで魂を失った抜け殻のように大きく目を開いたその顔をぼんやりと眺めていた。