誰かが奏でる旋律(ストーリー)【短編集】

 あれから数日後


 止まない雪の中で


 私は、またこの河川敷に立ち尽くしている。


 結局、彼の通夜にも、葬儀にも参列できなかった。


 彼は、私のせいで死んだのだから……


 狂信的な私のファンが彼の身元を割り出して、殺人を犯した。


 その犯人は捕まったけど、それを知った私は何度、彼の後を追おうとしただろう。


 真新しい手首の傷が少し痛い。


「ごめんなさい………」


 また涙が零れてきた。


 もう、枯れたと思った涙が溢れてくる。


 彼への献花が少し増えている。


 私は、そこに渡せなかったクリスマスプレゼントをそっと捧げた。


「私、精一杯歌うからね。私の声があなたに届くくらいに……」


 追うのではなく、残ることを決意した私の目から一粒、


 雪のような涙が零れ落ちた。



【六曲目 完】