「…なんで浴衣着てるの?」 「いや、浴衣着てないとわかんないかと思って」 おでこにペッタリ張り付いている髪を持ち上げながら彼は笑った。 「どっか店入る?っていってもこんなずぶ濡れだけど」 「もしかして六時からずっと待ってたんですか?」 「無理矢理約束したの俺だしね」 無理矢理なんかじゃない。 なかなか言い出せなかった私の気持ちを言葉にしてくれた。 なのにまた私は言えないんだ。 可愛く笑ってありがとうって。 卓くんの前で笑うアケミが一瞬頭に浮かんだ。