自問する必要なんて、初めからナイのに・・・



生まれたトキから、貴方の傍で生きるコトは必然だった。


幼馴染みであるコトが、いつでも私に安心を齎してくれて。


それが…、あまりにも幸せすぎたんだね?



好きから変化した、愛するキモチも、貴方との経験も。


すべてを握る拓海ナシでは、私の人生なんて無色透明なの。


いつだって鮮やかに染めてくれたのは、貴方だったから…。



拓海をキライになって、忘れるなんてムリ――



「っ・・・」

ジワリと湧き上がる涙が、思慕感情を呼び覚ましていく。


幾重にも零れ落ちる涙は、苦しみだけを内心に置き去りにする。



「っ…、くっ・・・」

必死で堪えていた嗚咽が、とうとう漏れてしまった。



現実の辛さから逃げたくて、思い出に縋りつきたいのに。


大切なモノさえも破壊されながら、孤独に晒される。



あまりに急すぎる別離が、生きる術を閉ざしていくの・・・




「蘭…、これで俺のモノだろう?」

ベルガモットの香りとともに、自信に満ちた声が届いた。



抱き締められているのが、カンケイを切り裂いた人だなんて。


これ以上…、惨い事実を受け入れたくないよ――