“結婚するつもりか?”


そう言って捉える瞳が、錯覚なのか儚げにも見えて。


交わる視線に、吸い込まれそうになる。



その表情が表すモノは、何――?



ドキンと跳ねてしまう心臓に、心が揺さぶられた。


先ほど拒否されていても、なお・・・



私はまだ社長に対して、期待をしているの?



願ってもムリだと、悟っていながら――





「蘭、どうなんだ?」


「っ――」


隣で腰を下ろす社長の姿に、懐かしさを覚えた。


漂うホワイトムスクの香りが、時の経過をプラスしていて。


私たちのキョリを、まざまざと示すの。



その証拠に、こんなに近くにいても。


貴方の考えなんて、何も分からない・・・




望んで結婚するんじゃない。


結婚しなければならないの――



それが私に課せられた、仏罰であって。




密かに貴方へ向けた、愛証だから――