今日はやけに長く感じた、会社までの道程。


やっと社屋が見えて、些かホッとしてしまう。


だけれど、そびえ立つ“拓海キャッスル”が心を委縮させる。



まざまざと思い知らされるのは、東条の大きさ。


日本経済の中枢を担っていく、社長の行き先も。


私1人の存在が、壊すコトなんて出来ない。



分岐点なんて、この世に生を受けたトキから出来ていて。



元々、別の道を歩んでいたのだから――



幼馴染みでいられたコトは、きっと誇りになると思う。


貴方の秘書でいられた、僅かなトキさえも・・・




バタンッ――

一息ついて降車すると、ドアを閉めた。



この先では、もう泣かない・・・



最後の務めをキッチリ果たすために――





「社長、おはようございます!」


「おはようございます」


爽やかな笑顔で、ロビーを闊歩する社長。



貴方の偉大さを、しっかり眼に焼きつけておきます。