仕方ないって、分かっているの。


貴方の為だって、頭では理解しているの。


それでも心は、制御不能に陥りそうだよ。



貴方には何も・・・、理由など言えないのに――



「・・・ハァ」


私が答えないでいると、溜め息が聞こえて。


何も発しない、精悍な横顔が怖くなる。




金に目の眩んだ、強欲女だと呆れられた?


それとも私を、尻軽女だと思っているの?



「ッ・・・」


途切れることなく次々に浮かぶ、負の考え。


咎めてくれた方が、どれほど楽かと思う。




沈黙なんて、不安しか生まれナイから――



スポーツカー特有の狭い車内が、重い空気に包まれていると。





「それで・・・、どうして結婚するんだ?

昔から蘭は、石橋を叩いて渡る性格だったし。

そんなオマエが、いきなり結婚なんて異質に思うが――?」


走行中のため、前方を向いたまま尋ねられた。



「っ――!」



こんなトキに、幼馴染みを気取るなんて――