一人で早足で、どんどんと坂を上っていく。 途中で、爽の声が聞こえた気がした。 だけど、後ろは振り返らなかった。 あたしの歩くスピードは、次第に増していく。 苦しい。 先輩が好きなのに。 あたしは、先輩が好きなのに。 爽の気持ちも、痛いほど分かるから。 爽の気持ちに共鳴しちゃってる自分が、 ほんの少しでもいるから。 雨が降ったかのように、乾いた地面に雫が零れた。 あたしはそれに、気づかないフリをした。