初めて入った喫茶店。 暖かい色調の店内と、穏やかな音楽。 僕は隅の方のテーブルに着き、カウンターに背を向けて手紙を脇に置いた。 運ばれて来たコーヒーの表面に暖かい色をした丸い照明が映り、夜空に浮かんだ満月を思わせる。 良い香りを漂わせているそれを一口飲み、手紙を開いた。 細い線のペンで書かれた、クセのある小さな丸文字。 ――涼ちゃん―― ゆっくり、ゆっくり夏夜の言葉を目でなぞっているうちに僕の視界は波打ちはじめ、カップの中の月が歪んだ。