……………そうやって。


大人は面倒なことを、すぐ俺に押し付ける。


ドアノブに手を伸ばした校長は、俺に思い切り睨まれているなんて、思いもしないだろう。




―――――――ふと。


彼は何かを思い出したかのように、手の動きを止めた。




「……君は、今の学校生活に満足していない。
 そうだろう?」

「!!」


俺はその言葉に、思わず目を見開いた。


全てを見透かされているような……

そんな、気がした。




何も答えられずにいると、校長はチラリ、とこっちを見て……

微かに、笑った。




「黒沢、明良。
 彼がいれば……君の学園生活も、少しは充実するかもしれないね」






……意味深な言葉を残して、校長は去っていった。


宙を舞っていた煙草の煙。

その香りが、やけに鼻につく。




再び静まりかえった生徒会室で……

俺は一人、まだ見ぬ転入生に思いを巡らせていた。




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