きっぱりそう言い切ると、山岸はバツの悪そうな顔をした。


「残念ながら、今回ばかりは坊ちゃまのおっしゃる通りにはできません。
 ……坊ちゃまのお父様から直々に、頼まれたことですので」

「!?」


親父が、俺に専属執事を?

一体、何を企んでやがるんだ。




「なーに難しそうな顔をしてんだ?
 そんな大それた理由じゃないって。
最近、オッサンが体調崩しがちでさ。
今までみたいに坊ちゃんのボディーガードするのはキツいわけよ、もう良い歳だし。
んで、数いる優秀な専属執事候補の中から、大抜擢されたのが……」


オレ、と親指で自分を指さして、金髪は得意げに笑った。

山岸は呆れかえったような表情で奴を見ていたが、叱っても全く効果がないと悟ったらしい。

小さくため息を吐くだけで、口を開くことはしなかった。


「……じゃあ、山岸はもうここを出て行くのか?」

金髪から視線を外して山岸に尋ねると、彼はやんわりと首を横に振った。


「いえ、坊ちゃまの送り迎えは、今まで通り私がさせていただきます。
 せめて、高校を卒業するまでは」

「………そうか」


ふと、視線を感じて横を見る。

そこには案の定、眼鏡越しに俺をじっと見つめる金髪の姿があった。




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