「どうなさいましたか?」
そう言った山岸の声は、いつもと変わらず落ち着いていて。
さっきまでの口調とは、まるで別人だった。
「俺がこいつの主人ってのは、一体どういうことだ?」
例え山岸の親戚だとしても、見ず知らずの奴に主人呼ばわりされる覚えはない。
「あぁ、申し遅れました。
彼は……」
「山岸圭史郎。
26歳、独身、彼女無し。
今日から坊ちゃんの専属執事だ!
よろしく☆」
入学初日の自己紹介のようなノリで、挨拶をする金髪。
その言葉に、俺は目眩を覚えた。
―――――専属、執事だと?
こんなチャラついた奴が、俺の……
「説明しろ、山岸」
「はい、実はですね……
圭史郎は、私の甥でして」
甥、ということは。
金髪は、山岸の弟の子供か。
「だが、運転や護衛には山岸がいるし、家に着けば他にも手伝いが五万といるだろう。
専属執事なんて、俺には必要ない」
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