「ごめんな、坊ちゃん。
怪我しなかったか?」
俺の目線に合わせて腰を曲げる金髪。
澄んだ焦げ茶色の瞳が、レンズ越しに俺を見つめる。
………なんか。
子供扱いされてるみたいで、ムカつく。
俺の僅かな表情の変化を感じ取ったのだろう、山岸が金髪の頭にゲンコツを落とした。
「お前、主人に対する口の聞き方ってもんを知らんのか!!
「お怪我はございませんか?」くらい言えんでどうする!」
再び廊下に響く、山岸の怒声。
(…………ん?)
何気なく聞いていた山岸の言葉の中の、ある単語に俺は反応した。
主人……
今、主人って言わなかったか?
「おい、山岸」
俺が口を開くと、辺りは水を打ったように静まり返った。
さっきまでの騒がしさが、嘘だったように。
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