「坊ちゃま、おかえりなさいませ」


エントランスで俺の帰りを待っていた男に鞄を預け、山岸と並んで歩く。

その間も俺は、奴の………


黒沢の言った言葉を、思い返していた。









――――お前は、あいつとは全然違う。




確かに、そう言っていた。

だが。


……もちろん、俺からすれば全く意味がわからない。


“最低だ”とか、親にも言われたことがないような、酷いことを言われ。

その上どこの誰かもわからないような奴と比べられて、似てないと言われる始末。


頭の中が、疑問符だらけで破裂寸前だった。




……………しかも。


何か言い返そうと口を開きかけた俺に、アイツはこう言ったんだ。








―――――もう二度と、俺に構うな。




「……意味、わかんねぇ」


晴れ渡る空と裏腹に、俺の心は曇っていく。




構うな、なんて言われたら。

俺がアイツに、執着してるみたいじゃねーか。


……そんな風には、死んでも思われたくない。

周りの奴にも……

もちろん、本人にも。




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