「俺には、」 俺が掴んだせいで乱れた服装を正しながら、 「…失うものなど、もう何もないからな」 奴は俺の目を見て、そう言い放った。 「はぁ?なんだよ、それ」 ワケがわからなくて、顔をしかめる。 ――――この時。 奴の言葉の本当の意味に、俺が気付けていたなら。 漆黒の瞳のその奥に潜む、深い闇から目を逸らしていなければ。 俺はもっと早く、お前を――――…… 「お前には、関係ない」 救えたかも、しれない。 .