「キャー!!榊様ーー!!!!」




ドアを開けた瞬間、体全体で感じる、心地よい春の日差し。


俺がリムジンから降りると、いつものように歓声が上がった。

毎日毎日、飽きもせず俺を出迎える無数の女子生徒。


俺が一歩踏み出す度に、道がみるみる拓けていく。


スッと右手を上げると、一際歓声が大きくなった。











―――俺の名前は、榊 唯斗(サカキ ユイト)。


あの有名な榊財閥の、一人息子だ。

榊財閥と言ったら、今や世界に知らない人がいないくらいの有名どころ。

社長のただ一人の息子である俺も、当然有名になるわけで。


毎日リムジンで登校し、リムジンで帰宅。

身の回りの世話は、全てメイドがしてくれる。

外出時には、常にボディーガードが周囲を固めていて、

プライベートも何も、あったもんじゃない。




………それでも、俺はそんな日々に満足していた。


金、地位、名声………

全て、俺の手の中にある。


だから、俺に不可能なことなんて、あるはずがない。




“完璧”という言葉に、最も近い存在。


そんなふうに、思っていた。




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