ドームをあとにしたあたしは、未だ放心状態のままカウンターへ向かった。
そして、吹き抜けのちょうど真下に飾られた笹の葉を見上げる。
たくさんの願い事が
あたしの視界を埋め尽くした。
その中に、ふと見慣れた文字を見つける。
あたしはそっとその短冊に目を通す。
“彼氏が出来ますよーにっ!
沖南”
「…おきちゃんってば。」
ふふ、っと笑って
他の短冊に目を移した。
…彼方は
短冊に、何を願ったんだろう。
今になって考えてみると、彼方は今まで一度も短冊を書かなかった。
おきちゃんと二人で何を書くか、盛り上がってるあたしたちを見て
『下らねぇ。んなもんで願いなんか叶うかよ。』
なんて言って
どんなに誘っても、書こうとすらしなかった。
……当たり前だよね。
彼方にとって七夕は、両親の命日で。
それを知らずにあんな事を口にしていた自分が無償に憎たらしい。
「…仕事、しなきゃ。」
ふぅ、と気を取り直し
笹の葉から離れると
あたしはある事に気が付いた。
――笹の葉の一番下。
陰になって見えにくい場所にぶら下がったある短冊。
気になって
その短冊を手に取ると
あたしの心が早鐘のように音を立てた。

